今年は負けたけれど、来年取り返せばいい。取引の成績としてはそう考えることがあっても、税金の計算は同じようには続きません。日本居住の個人が行う、総合課税の雑所得となる海外FX取引では、今年の損失を翌年の利益から差し引く繰越控除は使えません。
国内の一定のFX取引には3年間の損失繰越の制度がありますが、対象取引と申告の条件が決まっています。「FXだから全部同じ」とまとめず、まず自分の取引がどちらの扱いかを確認しましょう。
判断するのは、業者の呼び名だけではない
国税庁は、一定の市場デリバティブ取引や、第一種金融商品取引業者・登録金融機関を相手方とする一定の店頭デリバティブ取引について、申告分離課税の扱いを説明しています。この枠の損失には、条件を満たした場合の繰越控除があります。
一方、その対象に当たらないFX取引の利益は、一般に総合課税の雑所得です。この記事では、この扱いになる海外業者との取引を説明しています。法人の取引や、特殊な事情がある取引まで同じ結論にはしないでください。
| 比較する点 | 総合課税の雑所得となるFX | 特例対象の先物取引に係る雑所得等 |
|---|---|---|
| 翌年以後への損失繰越 | 原則としてできない | 要件を満たせば3年間 |
| 同じ年の損益 | 同じ総合課税の雑所得の範囲で確認 | 同じ特例の枠で確認 |
| 別の枠へ損失を移す | できない | できない |
| 繰越のための申告 | この特例の対象外 | 所定の書類と連続した申告が必要 |
「国内」「海外」は説明上の呼び方です。日本語サイトかどうか、口座通貨が円かどうかでは決まりません。契約相手と対象取引を確認し、分からなければ年間報告書や契約書を持って照会します。
3年間の成績が同じでも、年ごとの計算は変わる
次の表は、1年目に200万円の損失、2年目に150万円の利益、3年目に100万円の利益が出た例です。ほかの損益や経費を考えず、繰越の差だけを見ます。税額や、所得控除後の課税所得を表したものではありません。
| 年 | その年の取引損益 | 繰越なしの場合 | 3年繰越の要件を満たす場合 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | −200万円 | 翌年へ持ち越せない | 200万円を翌年へ繰り越す |
| 2年目 | +150万円 | 150万円の利益をその年に計算 | 150万円を控除し、残り50万円 |
| 3年目 | +100万円 | 100万円の利益をその年に計算 | 残り50万円を控除し、利益50万円 |
3年間の取引損益は合計50万円です。ただ、繰越が使えない側では、2年目と3年目の利益を、前年の損失なしでそれぞれ計算します。「通算では少ししか勝っていない」という感覚と、年ごとの所得計算が離れるのはこのためです。
だからといって、150万円や100万円に、そのまま一定の税率を掛ければ納税額が出るわけではありません。総合課税では、給与などの所得、所得控除、税額控除なども関わります。表の利益額と納税額は分けて考えてください。
同じ年の損失と、翌年の損失を混ぜない
たとえば、同じ年に120万円の利益と50万円の損失を確定したなら、対象となる同じ区分の取引損益は差し引き70万円です。繰越ができないことと、同じ年の損失まで無視することは違います。
一方、120万円の利益を12月までに確定し、50万円の損失が翌年に確定したなら、単に差し引き70万円として前年の計算に入れることはできません。ここで使うのは確定した損益で、年末の含み損をそのまま引くわけでもありません。
年末残高だけで集計せず、取引ごとの決済時期を確認すること。追加の入出金や未決済の建玉が混ざっていると、残高の増減だけでは年間損益を追えなくなります。
納税用のお金は、翌年の取引と分けて考える
利益が出たあとほど、取引数量を増やしたくなるかもしれません。しかし、前年の利益に関係する納付は、翌年の取引が負けたからといって自動的になくなるものではありません。
年末が近づいたら、まずその年の確定損益と経費を集計します。次に、給与や控除も含めた概算を出し、納税に必要になる資金を取引資金と分けて把握します。住民税の納付も関係するため、所得税の申告時期だけを見て終わらせないようにします。
「利益の3割を取っておけば誰でも足りる」という決め方はできません。同じ利益でも、ほかの所得や控除が違うからです。前年の数字をそのまま使うより、その年の見込みを入れて確認し直してください。
出金する場合は、ボーナスの減額や保有ポジションへの影響も確認します。税金のためのお金を確保する操作で、取引口座の維持率が想定以上に下がっては困ります。必要な資金を引き出す時期まで含めて考えましょう。
特例対象の国内FXもあるなら、申告の継続を確認
一定の先物取引の損失繰越を使うには、損失が生じた年の申告だけで終わりではありません。国税庁は、所定の付表などを添付した申告を、その後も連続して行う手続きを案内しています。
- 損失の年に、繰越損失用の付表と計算明細書などを添付して申告する。
- その後も、必要な付表を付けた申告を連続して行う。
- 控除を受ける年には、付表と計算明細書などを確認して提出する。
取引がない年でも、繰越を使うための手続きの確認が必要です。「今年は売買していないから何もしなくてよい」と判断する前に、前年の申告書を見直してください。
国内FXと海外FXを併用していても、海外FX側の損失をこの繰越欄へ移すことはできません。口座を分けるだけでなく、集計表も課税の枠ごとに分けておくと、入力時の混同を減らせます。
損失の年でも、履歴は残しておく
繰り越せないなら記録はいらない、とは考えないでください。同じ年の別口座の利益や、同じ総合課税の雑所得に当たる収入と合わせて確認する場合があります。損失額を説明する資料も必要になります。
保存したいのは、全口座の取引履歴、入出金履歴、必要経費の資料、集計に使った計算表です。外貨建てなら円換算に使った方法も残します。翌年に口座を閉じたあと、過去の履歴がすぐ取得できるとは限りません。
年末に迷いやすい判断
含み損を年内に決済すればよいですか?
税金だけで一律に決めることはできません。決済にはコストがかかり、取引の計画も変わります。損失を確定すれば同額の税金が戻るわけでもありません。まず年間の確定損益を整理し、取引としての判断と税務上の影響を分けて確認します。
法人を作れば、今年の個人の損失を使えますか?
個人の損失を、そのまま新しい法人の欠損金へ移すことはできません。法人の制度は別で、設立後の取引や申告要件の確認が必要です。過去の個人損失を取り戻す方法として、安易に法人化を考えないでください。
国内FXの繰越申告を忘れていた場合は?
どの年に何を申告したか、必要書類があるかで手続きの確認が変わります。「もう無理」「いつでも復活できる」と自己判断せず、過去の申告書と年間報告書をそろえて税務署へ確認します。
海外FXで損失しかない年も、必ず申告が必要ですか?
損失があることだけでは決まりません。ほかの所得や申告理由を含めて判断します。ただし、損失額の資料を捨ててしまうと、同じ年の別の所得と合わせる確認も難しくなります。申告の要否と、記録を残すことは分けて考えてください。
年をまたぐ前に一度、確定損益と納税に使う資金を確認する。繰越が使えない取引では、この地味な整理が翌年の資金管理につながります。
出典・確認した範囲
確認日:2026年9月18日。国税庁の令和8年4月1日現在の法令等に基づく案内を確認しています。個別の適用は契約・所得区分・申告状況によります。
関連する記事






