結論からいうと、判断の分かれ目は「利益が継続的に800万円を超えるか」です。個人の総合課税は課税所得900万円超で所得税33%+住民税10%に達しますが、資本金1億円以下の法人は年800万円以下の所得に15%(一定の場合17%)、超える部分に23.2%です。ただし法人には設立費用、住民税の均等割、社会保険料、記帳の手間が加わります。税率だけで決めると失敗します。
| 項目 | 個人(雑所得) | 法人 |
|---|---|---|
| 税率 | 所得税5〜45%+住民税10% | 年800万円以下15%(一定の場合17%)、超える部分23.2% |
| 損失の繰越 | できない | 欠損金を繰り越せる |
| 経費の範囲 | 取引に直接必要なもの | 役員報酬、社宅、保険など範囲が広い |
| 設立費用 | 不要 | 株式会社で20万円超、合同会社で10万円前後 |
| 赤字でもかかる税 | なし | 法人住民税の均等割(最低でも年7万円程度) |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社会保険への加入義務が生じる |
| 記帳・申告 | 比較的簡易 | 複式簿記と法人税申告。税理士費用がかかることが多い |
| 最終確認日 | 2026年9月7日 | |
税率だけを比べると
個人は累進なので、利益が増えるほど負担率が上がります。法人はほぼ2段階です。
| 課税所得 | 個人(所得税+住民税の税率) | 法人(法人税の税率) |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 15% | 15% |
| 330万円超695万円以下 | 30% | 15% |
| 695万円超900万円以下 | 33% | 15%(800万円まで) |
| 900万円超1,800万円以下 | 43% | 23.2%(800万円超の部分) |
| 4,000万円超 | 55% | 23.2% |
表だけを見ると、課税所得330万円を超えたあたりから法人が有利に見えます。しかし法人には利益が出ていなくてもかかる費用があり、そこを織り込むと結論が変わります。

法人にすると増える固定的な負担
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 株式会社20万円超/合同会社10万円前後 | 登録免許税、定款認証など |
| 法人住民税の均等割 | 年7万円程度から | 赤字でも課税される。自治体・資本金により異なる |
| 社会保険料 | 役員報酬に応じて発生 | 会社と個人で折半。加入義務がある |
| 税理士報酬 | 年20万〜50万円程度 | 法人税申告は個人より複雑 |
| 会計ソフト・事務 | 年数万円+自分の時間 | 複式簿記が前提になる |
これらを合計すると、年間30万〜80万円程度の固定費が上乗せされます。税率の差でこの金額を回収できるかが、実質的な分岐点になります。
特に見落とされやすいのが社会保険です。役員報酬を出せば加入義務が生じ、報酬額に応じた保険料を会社と個人で負担します。会社負担分は損金になりますが、キャッシュアウトであることに変わりはありません。
税率以外で効いてくる2つの差
損失を繰り越せる
個人の雑所得には繰越の制度がなく、損失は年をまたぐと消えます。法人なら欠損金として繰り越し、翌期以降の所得と相殺できます。成績の振れが大きいほど、この差は税率差より大きくなります。
経費の範囲が広い
役員報酬、退職金、社宅、生命保険など、個人の雑所得では認められない支出を損金にできる余地があります。ただし役員報酬は原則として期首から3か月以内に決め、期中は変更できないなど、制約も多くなります。利益の見通しが立たない段階では、この制約が不利に働くこともあります。

検討の順序
- 直近2〜3年の損益を並べる。単年ではなく、継続性を見ます。
- 個人のままの税額を概算する。他の所得と合算した課税所得で計算します。
- 法人化した場合の税額+固定費を概算する。均等割、社会保険料、税理士報酬を必ず含めます。
- 差額が固定費を上回るか確認する。数万円の差なら、手間の増加に見合いません。
- 業者が法人口座に対応しているか確認する。法人名義の口座を受け付けない業者もあります。
- 税理士に相談する。役員報酬の設計まで含めて試算してもらいます。
5番目は実務上の落とし穴です。すべての海外FX業者が法人口座を開設できるわけではありません。法人設立を決める前に、使う予定の業者の対応状況を確認してください。
よくある質問
利益いくらから法人化を考えるべきですか
一律の基準はありませんが、固定費を回収できる水準として、継続的に800万円を超えるかどうかが一つの目安になります。単年で超えただけでは判断材料として弱く、翌年に戻れば固定費だけが残ります。
合同会社と株式会社のどちらがよいですか
設立費用と維持の手間は合同会社のほうが軽くなります。取引先からの信用や資金調達を重視しないなら、合同会社を選ぶ例が多くあります。
法人口座なら税金は自動的に安くなりますか
なりません。法人の所得に対して法人税がかかり、そこから個人が役員報酬として受け取れば、その報酬に所得税がかかります。二段階で課税される点を踏まえて設計する必要があります。
個人口座の資金を法人口座に移せますか
FX口座間で直接移すことはできません。個人口座から出金し、法人へ資本金や貸付として入れたうえで、法人名義の口座に入金する流れになります。処理方法は税理士に確認してください。
会社員でも法人を作れますか
法律上は可能ですが、就業規則で兼業や役員就任が制限されている場合があります。また社会保険の扱いが複雑になるため、勤務先の規定を先に確認してください。
赤字の年はどうなりますか
法人税は課されませんが、法人住民税の均等割は赤字でも発生します。加えて社会保険料と税理士報酬も続くため、赤字の年ほど法人化のコストが重く感じられます。
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この記事で特に重要な3点
- 法人税率は年800万円以下15%(一定の場合17%)、超える部分23.2%。個人の累進より上限が低い。
- ただし均等割・社会保険料・税理士報酬で年30万〜80万円の固定費が加わる。税率差でこれを回収できるかが分岐点。
- 税率以上に効くのが欠損金の繰越。成績の振れが大きいほど法人の利点が出る。業者の法人口座対応も事前に確認する。

