結論からいうと、海外FXの損失は給与所得や事業所得と損益通算できません。損益通算の対象は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られており、雑所得は含まれないためです。ただし同じ雑所得(総合課税)の中でなら相殺できます。暗号資産の利益やアフィリエイト収入との通算は可能で、国内FXとの通算だけができません。
| 相手 | 通算できるか | 理由 |
|---|---|---|
| 他の海外FX業者の損益 | できる | いずれも総合課税の雑所得 |
| 暗号資産の売買益 | できる | 原則として雑所得に区分される |
| アフィリエイト・副業の収入 | できる | 雑所得であれば同じ枠 |
| 国内FX・CFD・先物 | できない | 申告分離課税という別の枠で計算する |
| 給与所得 | できない | 雑所得は損益通算の対象外 |
| 事業所得 | できない | 同上 |
| 株式の譲渡益 | できない | 別の分離課税の枠 |
| 最終確認日 | 2026年9月7日 | |
損益通算と内部通算は別物
混同されやすい2つの言葉を先に整理します。
| 損益通算 | 内部通算 | |
|---|---|---|
| 意味 | 異なる所得区分の間で赤字と黒字を相殺する | 同じ所得区分の中で相殺する |
| 対象 | 不動産・事業・山林・譲渡の4区分 | 区分の制限なし |
| 海外FXの扱い | 対象外(雑所得のため) | できる |
「海外FXは損益通算できない」という説明は、正確には損益通算(他の区分との相殺)ができないという意味です。雑所得の中での相殺は問題なくできます。ここを取り違えると、相殺できるはずの損失を切り捨ててしまいます。

計算例で確かめる
前提:会社員(給与の課税所得400万円)で、その年の損益が次のとおりだったとします。
| 内容 | 金額 | 区分 |
|---|---|---|
| 海外FX(A社) | +120万円 | 雑所得(総合課税) |
| 海外FX(B社) | △50万円 | 雑所得(総合課税) |
| 暗号資産 | △30万円 | 雑所得(総合課税) |
| 国内FX | △80万円 | 先物取引に係る雑所得等(申告分離) |
このとき、総合課税の雑所得は120万円 − 50万円 − 30万円 = 40万円になります。国内FXの△80万円はこの計算に入れられません。別枠で△80万円として扱い、翌年以降3年間の繰越控除の対象になります(繰越には毎年の確定申告が必要です)。
もし国内FXの損失を合算できていれば課税対象はゼロでしたが、枠が違うため40万円に対して課税されます。枠をまたぐ相殺はできないという点が、実額として効いてくる場面です。
国内FXだけが優遇されている点
| 海外FX | 国内FX | |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税(累進5〜45%) | 申告分離課税20.315% |
| 同じ枠内での相殺 | できる(雑所得どうし) | できる(先物取引に係る雑所得等どうし) |
| 他の区分との損益通算 | できない | できない |
| 損失の繰越 | できない | 3年間できる |
差が最も大きいのは最下行です。海外FXには繰越の制度がありません。年をまたぐと損失は消えます。前半に利益、後半に損失という順で年をまたいだ場合、利益に対する税だけが残ることになります。
なお、国内FXの枠には国内業者を通じたCFDや商品先物なども含まれます。これらはその枠の中では相互に通算できます。
副業の種類によって結論が変わる
「副業所得と相殺できるか」は、その副業がどの所得区分に入るかで決まります。同じ副業でも扱いは一つではありません。
| 副業の形態 | 所得区分 | 海外FXの損失と相殺 |
|---|---|---|
| アフィリエイト、原稿料、ハンドメイド販売(小規模) | 雑所得 | できる |
| フリマアプリでの継続的な販売(小規模) | 雑所得 | できる |
| アルバイト・パート | 給与所得 | できない |
| 個人事業として営む業務 | 事業所得 | できない |
| アパート・駐車場の賃貸 | 不動産所得 | できない |
相殺できるのは1行目・2行目のように雑所得に区分される副業だけです。給与型の副業は所得区分が異なるため、いくら収入があっても海外FXの損失をぶつけることはできません。
逆に言えば、雑所得の副業で利益が出ている年に海外FXで損失が出た場合、申告することで税額が下がる可能性があります。損失だけを理由に申告を省略すると、この相殺を取り逃がします。

損失を無駄にしないための実務
- 雑所得をすべて洗い出す。海外FX、暗号資産、副業収入などを一覧にします。相殺できる相手が見つかることがあります。
- 年内に損益を確定させる。繰越ができない以上、相殺は同じ年の中でしかできません。含み損を年内に確定させるかは、税額を見て判断します。
- 国内FXの損失は必ず申告する。繰越控除を受けるには、損失が出た年から毎年連続して確定申告をする必要があります。
- 経費を漏らさない。雑所得の計算上、必要経費は総収入金額から差し引けます。証憑を保存してください。
- 枠ごとに集計表を作る。総合課税の雑所得と、申告分離の枠を最初から分けて記録します。
2番目は判断が必要な項目です。税額のためだけに不合理な決済をするのは本末転倒ですが、年末時点で相殺できる利益があるなら検討する価値はあります。
よくある質問
複数の海外FX業者を使っている場合は
すべて合算します。業者ごとに分けて申告するのではなく、雑所得としてまとめて計算します。片方が損失なら相殺されます。
損失だけの年も申告したほうがよいですか
海外FXだけなら、繰越できないため申告しても税額は変わりません。ただし他に雑所得がある場合は相殺できるので、申告する意味があります。
株式の損失とは相殺できますか
できません。上場株式等の譲渡損益は別の分離課税の枠です。海外FXの雑所得とも、国内FXの枠とも通算できません。
海外FXの損失を翌年に持ち越す方法はありますか
制度としてありません。法人化すれば法人の欠損金として繰り越せますが、設立と維持のコスト、社会保険料などを含めた総合的な比較が必要です。
不動産所得の赤字とは通算できますか
不動産所得は損益通算の対象区分なので、その赤字を給与所得などと通算することはできます。ただし海外FXの雑所得と直接相殺する形にはなりません。順序は所得税法の定めに従って計算されます。
経費で赤字にした場合はどうなりますか
雑所得がマイナスになっても、他の所得とは通算できず、繰越もできません。実質的に切り捨てになるため、経費の計上時期は利益がある年に合わせるのが合理的です。
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この記事で特に重要な3点
- 損益通算の対象は不動産・事業・山林・譲渡の4区分。雑所得の海外FXは対象外。
- ただし雑所得の中でなら相殺できる。暗号資産や副業収入との通算は可能。
- 国内FXとは枠が違うため通算できず、海外FXには繰越制度がない。相殺は同じ年の中で完結させる必要がある。

