結論からいうと、ロスカットは損失の拡大を止める強制決済、ゼロカットは止めきれずに生じたマイナス残高を業者が肩代わりする措置です。役割が違い、働く順番も違います。まずロスカットが作動し、それが間に合わなかったときにゼロカットが出番になります。両方そろって初めて「損失は入金額まで」という状態が成り立ちます。
| 項目 | ロスカット | ゼロカット |
|---|---|---|
| 役割 | 証拠金維持率が基準を割ったら強制決済する | マイナスになった残高を0に戻す |
| 作動のタイミング | 維持率が基準(例:20%)を下回った時点 | ロスカット後に残高がマイナスのとき |
| 根拠 | 取引条件として各社が設定 | 各社の利用規約が定める措置 |
| 国内FXにもあるか | ある | ない(追証として請求される) |
| 利用者の負担 | その時点の損失が確定する | マイナス分の負担はなくなる |
| 処理の速さ | 自動・即時 | 業者により即時〜数営業日 |
| 最終確認日 | 2026年9月7日 | |
なぜ2つの仕組みが必要なのか
ロスカットは、証拠金維持率が一定の水準を割ったときにポジションを強制的に決済する仕組みです。損失が資金を食いつぶす前に止めるためのブレーキにあたります。
ところがこのブレーキは、価格が連続して動いていることを前提にしています。週明けの窓開け、経済指標発表直後、要人発言による急変などで価格が飛ぶと、決済したい水準では約定できません。結果として、ロスカットは作動したのに残高がマイナスになる、という事態が起こります。
そこで登場するのがゼロカットです。マイナス分を業者が引き受け、残高を0に戻します。国内FXにはこの仕組みがないため、同じ状況では不足額の入金を求められます(追証)。
数字で追う一連の流れ
前提:口座残高10万円、レバレッジ500倍、米ドル/円を1ロット(10万通貨)保有。必要証拠金はおよそ3万円です。
| 局面 | 状態 | 作動する仕組み |
|---|---|---|
| 平常時 | 含み損2万円。証拠金維持率は基準を上回る | なし |
| 下落が進む | 含み損が7万円を超え、維持率が20%を割る | ロスカット(強制決済) |
| 通常の相場 | 残高は数千円〜3万円程度残る | ここで完了 |
| 価格が飛んだ場合 | 指定水準で約定できず、決済価格が大きく不利になる | ロスカットは作動したが間に合わない |
| 結果 | 残高がマイナス15万円になる | ゼロカットで0にリセット |
この例では、利用者の損失は入金した10万円にとどまります。国内FXであれば、マイナス15万円の不足分を入金する義務が生じていました。差が出るのは、価格が飛んだ最後の局面だけである点も押さえておいてください。平常時の値動きでは、どちらもロスカットで完結します。

業者ごとに違うのは「処理の仕方」
| 確認する項目 | ありうる違い |
|---|---|
| 処理の方式 | 自動でリセットする/利用者からの申請を受けて処理する |
| 処理のタイミング | 即時/当日中/翌営業日以降にまとめて |
| 追加入金との関係 | リセット前の入金がマイナス分に充当される場合がある |
| 複数口座の扱い | 同一業者内の他口座残高と相殺する規定があることも |
| ボーナスの扱い | ゼロカット時にクレジット型ボーナスが消滅する規定が多い |
| 適用除外 | 両建て・アービトラージなど禁止行為への該当時 |
実務で影響が大きいのは3行目です。マイナス残高が表示されている状態で慌てて入金すると、その資金が穴埋めに回ることがあります。リセットの処理が終わってから入金するのが安全です。
ゼロカットが実際に出番となる場面
マイナス残高は、いつでも起こるわけではありません。過去に問題となったのは、価格が連続性を失った次のような局面です。
| 場面 | 何が起きるか | 備え方 |
|---|---|---|
| 週明けの窓開け | 土日のニュースを織り込み、金曜終値と離れた価格で始まる | 週末にポジションを持ち越さない、または量を減らす |
| 重要指標の発表直後 | 数秒で大きく動き、スプレッドも広がる | 発表をまたぐ建玉を避ける |
| 中央銀行の政策変更 | 想定外の決定で一方向に飛ぶ | スケジュールを事前に確認する |
| 流動性の薄い時間帯 | 板が薄く、少額の注文でも価格が跳ねる | 早朝や年末年始の取引量を抑える |
いずれも「持っていなければ影響を受けない」場面です。ゼロカットは最後の防波堤であって、これを前提に設計する取引ではありません。ポジションを持つ時間帯を選ぶこと自体が、最も費用のかからない対策になります。
ゼロカットがあっても油断できない理由
- 法律ではなく規約である。制度として保証された仕組みではなく、業者が支払える状態にあることが前提です。
- 入金額は失う。マイナス分が消えるだけで、預けた資金が戻るわけではありません。
- 禁止行為と判定されれば適用されない。複数口座間の両建てなどが典型です。
- 高レバレッジを正当化する理由にはならない。損失の上限が入金額なら、その入金額を失う速度が上がるだけです。

口座開設前に確認すること
- 利用規約にゼロカットの条項があるか(海外FX=必ずあるとは限りません)。
- 自動処理か申請制か。申請制なら手順と期限を控える。
- 適用除外として何が列挙されているか。
- ロスカット水準(証拠金維持率の何%か)はいくつか。
- ボーナスがゼロカット時にどう扱われるか。
よくある質問
ロスカットとゼロカットは同時に起きますか
順番があります。先にロスカットで決済され、その結果として残高がマイナスになった場合にゼロカットが働きます。マイナスにならなければゼロカットは発生しません。
ロスカットされない設定にはできますか
できません。ロスカット水準は業者が定める取引条件で、利用者が無効にすることはできません。水準の数値は業者や口座タイプによって異なります。
マイナス残高が数日消えないのですが
翌営業日以降にまとめて処理する業者があります。規約に記載された期間を過ぎても戻らない場合は、口座番号と発生日時を添えてサポートへ問い合わせてください。
ゼロカットされるとボーナスはどうなりますか
多くの業者で、口座に付与されていたクレジット型ボーナスは消滅します。再付与の条件は業者ごとに異なるため、ボーナス規約を確認してください。
ゼロカット目的で意図的に大きく張るのは問題ですか
ゼロカットを前提とした取引は、規約で禁止行為として扱われる場合があります。特に複数口座や複数業者を使って損失側と利益側を分ける手法は、利益取消しや口座凍結の対象になります。
国内FXにゼロカットがないのはなぜですか
顧客の損失を業者が補填する行為は、日本の規制上、損失補填として制限されるためと説明されています。代わりに証拠金規制でレバレッジが25倍に抑えられ、損失が膨らみにくい設計になっています。
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この記事で特に重要な3点
- ロスカットは損失を止めるブレーキ、ゼロカットは止めきれなかった分の肩代わり。順番に働く別の仕組み。
- 差が出るのは価格が飛んだ場面だけ。平常時の値動きではロスカットで完結する。
- ゼロカットは規約上の措置。処理方式・タイミング・適用除外を開設前に確認し、リセット前の追加入金は避ける。

