結論からいうと、スリッページとは注文した価格と実際に約定した価格のずれです。不利方向だけでなく有利方向にも発生します。原因は主に3つ、流動性の低下・注文処理の遅延・価格の跳び(ギャップ)です。対策は許容幅の設定と時間帯の選択ですが、損切り注文に狭い許容幅を設定するのは逆効果なので注意してください。
| 項目 | 結論 |
|---|---|
| スリッページとは | 指定価格と約定価格のずれ。有利方向にも起きる |
| 主な原因 | 流動性の低下、注文処理の遅延、価格の跳び |
| 金額換算(米ドル/円) | 1ロットで1pips=約1,000円、0.1ロットで約100円 |
| 発生しやすい場面 | 指標発表直後、早朝、週明け、大口注文 |
| 設定できる対策 | MT4/MT5の許容スリッページ(新規注文向け) |
| やってはいけないこと | 損切り注文に狭い許容幅を設定すること |
| 評価の方法 | 取引履歴で、ずれが不利方向に偏っているかを見る |
| 最終確認日 | 2026年9月7日 |
なぜずれるのか
注文を出してから約定するまでには、必ず時間差があります。その間に価格が動けば、見えていた価格では約定しません。原因は3つに分けられます。
| 原因 | 何が起きているか | 起きやすい場面 |
|---|---|---|
| 流動性の低下 | その価格で取引できる相手が足りず、次の価格帯まで食い進む | 早朝、年末年始、マイナー通貨 |
| 注文処理の遅延 | 送信から約定までの間に価格が動く | 通信環境が不安定なとき、注文が集中したとき |
| 価格の跳び | 連続した値動きが途切れ、離れた価格に飛ぶ | 指標発表直後、週明けの窓開け |
3つとも業者だけの問題ではありません。1つ目と3つ目は市場側の要因です。業者を変えても、指標発表の瞬間に滑ることは避けられません。
金額に直すと影響が見える
pipsのままでは判断できないので、円に直します。米ドル/円の場合、1pips=0.01円です。
| ずれ | 0.01ロット | 0.1ロット | 1ロット |
|---|---|---|---|
| 0.5pips | 5円 | 50円 | 500円 |
| 1.0pips | 10円 | 100円 | 1,000円 |
| 3.0pips | 30円 | 300円 | 3,000円 |
| 10pips | 100円 | 1,000円 | 10,000円 |
平均1pipsのずれが不利方向に出ている場合、0.1ロットで月100回取引すれば1万円の負担です。スプレッドの差より大きくなることもあるため、コスト比較にはずれの実測値を含めてください。

許容スリッページの設定
MT4/MT5の成行注文画面には、許容できるずれの幅を指定する項目があります。指定を超えるずれが生じた場合、注文は約定しません。
| 注文の種類 | 許容幅の設定 | 理由 |
|---|---|---|
| 新規の成行注文 | 設定してよい | 約定しなくても、見送るだけで損失にならない |
| 利益確定の決済 | 設定してよい | 待てる場面が多い |
| 損切りの決済 | 狭く設定しない | 約定しないと損失が拡大し続ける |
| 逆指値(ストップ)注文 | 設定できない | 発動後は成行として執行される |
3行目が最も重要です。止めるための注文は、滑ってでも成立させるのが原則です。許容幅を狭くしたせいで損切りが通らず、含み損が膨らんだという事例は珍しくありません。
指値と逆指値の違い
- 指値(リミット)注文は、指定価格またはそれより有利な価格でのみ約定します。原則として不利方向には滑りません。
- 逆指値(ストップ)注文は、指定価格に到達した時点で成行注文として執行されます。したがって滑ります。
損切りに逆指値を使う以上、ずれは避けられません。損切り幅を決めるときは、想定されるずれの分も見込んでおくのが実務的です。指標発表をまたぐなら、そもそも建てないという判断も含めて検討してください。

自分の環境で実測する
- MT4/MT5の口座履歴から、期間を指定してレポートを出力する。
- 成行注文について、発注時の価格と約定価格の差を記録する。
- 平常時と指標発表時に分けて集計する。
- 不利方向と有利方向の件数を数える。
- 平均のずれを円に換算し、月間コストに加える。
判断基準は偏りです。両方向にばらついていれば市場の変動によるもの、不利方向にばかり偏っているなら価格提示の仕組みを疑う材料になります。件数が少ないうちは偶然の影響が大きいので、ある程度の回数を集めてから評価してください。
よくある質問
有利方向のスリッページもありますか
あります。想定より良い価格で約定することを正のスリッページと呼びます。有利方向のずれを反映する仕組みかどうかは業者によるため、取引条件の記載を確認してください。
スプレッドとスリッページは何が違いますか
スプレッドは常に発生する売買価格の差、スリッページは注文ごとに発生し得る価格のずれです。前者は事前に分かり、後者は事後にしか分かりません。
VPSを使えば減りますか
通信の遅延に起因する分は改善する可能性があります。ただし流動性の低下や価格の跳びによるずれは、VPSでは解消できません。
ゴールドや株価指数でも同じですか
値動きが速い銘柄ほどずれは大きくなります。1pipsあたりの金額も銘柄によって異なるため、取引条件で契約サイズを確認してから金額換算してください。
大きく滑ったときに取り消せますか
約定した取引の取消しは原則できません。ただし異常な価格での約定については、業者が事後に取り消す規定を置いていることがあります。規約の該当条項を確認してください。
滑りを完全になくす方法はありますか
ありません。市場価格が動く以上、成行執行では必ず生じ得ます。減らせるのは、時間帯の選択、ロットの分割、通信環境の改善という範囲です。
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この記事で特に重要な3点
- 原因は流動性・遅延・価格の跳びの3つ。うち2つは市場側の要因で、業者を変えても残る。
- 損切り注文に狭い許容幅を設定しない。止めるための注文は滑ってでも成立させる。
- 評価はずれの偏りで行う。不利方向にばかり出るなら業者側を疑う材料になる。

