結論からいうと、海外FXの損失は翌年以降に繰り越せません。国内FXには「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」という制度があり、確定申告を続ければ3年間繰り越せますが、これは租税特別措置法の特例で、対象は金融商品取引業者等を通じた一定の取引に限られます。海外の無登録業者との取引は対象外です。結果として、年をまたいだ瞬間に損失は消えます。
| 項目 | 海外FX | 国内FX |
|---|---|---|
| 損失の繰越 | できない | 3年間できる |
| 根拠 | 特例の対象外 | 租税特別措置法の繰越控除 |
| 同じ年の中での相殺 | 雑所得どうしなら可能 | 先物取引に係る雑所得等どうしで可能 |
| 繰越の手続き | 該当なし | 損失の年から毎年連続して確定申告が必要 |
| 取引がない年 | 該当なし | 取引がなくても申告を続ける必要がある |
| 年をまたいだ場合 | 損失は切り捨て | 翌年以降の利益と相殺できる |
| 最終確認日 | 2026年9月7日 | |
繰越控除とはどういう制度か
ある年に出た損失を、翌年以降の利益から差し引ける制度です。国内FXの場合、その年の損失を差し引ききれなかった分を翌年以後3年間にわたって繰り越し、同じ枠の利益と相殺できます。
相場の成績は年によって振れます。3年で均せば利益が出ていても、単年で区切ると損失の年が出る——そのときに税負担だけが残らないようにするための仕組みです。
海外FXの利益は総合課税の雑所得であり、この特例の対象になりません。雑所得には繰越しの制度そのものがないため、その年の中で相殺しきれなかった損失は切り捨てになります。

3年間でどれだけ差が出るか
前提:3年間の損益が同じ、他に所得がなく課税所得が下表の金額になるケースで比較します(住民税10%と復興特別所得税を含む概算)。
| 年 | 損益 | 海外FXの課税対象 | 国内FXの課税対象 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | △200万円 | 0円(切り捨て) | 0円(△200万円を繰越) |
| 2年目 | +150万円 | 150万円 | 0円(繰越と相殺) |
| 3年目 | +100万円 | 100万円 | 50万円(残り50万円と相殺後) |
| 3年合計の課税対象 | +50万円 | 250万円 | 50万円 |
実際の利益は3年で50万円しかないのに、海外FXでは250万円が課税の対象になります。繰越の有無は、税率の差よりも大きく効くことがあるという例です。
もちろん海外FXでも同じ年の中でなら相殺できます。1年目に△200万円、同じ年に他の雑所得で+150万円あれば、その年の雑所得は△50万円として計算されます(切り捨てになるのは差し引ききれなかった部分です)。
年をまたぐタイミングが効く
繰越ができない以上、利益と損失を同じ年に収めることが唯一の対策になります。
| パターン | 結果 |
|---|---|
| 1〜6月に+300万円、7〜12月に△300万円 | 同じ年なので相殺され、課税対象は0円 |
| 7〜12月に+300万円、翌年1〜6月に△300万円 | 300万円に課税。翌年の損失は切り捨て |
損益の中身は同じでも、年の区切り方で結論が変わります。利益が出た年は、その年のうちに納税資金を確保しておくことが実務上の必須事項です。翌年に損失を出しても、前年分の税は減りません。

繰越がない前提で資金を設計する
制度で救われない以上、運用側で備えるしかありません。効くのは利益を確定した時点で税額分を口座から抜くという単純な習慣です。
前提:FX以外の課税所得が400万円の会社員。利益を確定するたび、その3割強を目安に別口座へ移す運用にすると、次のようになります。
| 確定した利益 | 概算の税負担 | 取り分けておく金額の目安 |
|---|---|---|
| 50万円 | 約15.2万円 | 16万円 |
| 100万円 | 約30.4万円 | 31万円 |
| 300万円 | 約91.4万円 | 92万円 |
取り分けた資金は取引に使わないでください。納税資金を証拠金として使った結果、翌年の納付時に足りなくなる——これが年またぎで最も多い失敗です。住民税は翌年6月から課税されるため、資金を拘束される期間も長くなります。
国内FXで繰越を使うための条件
海外FXと併用している人向けに、国内FX側の手続きも整理しておきます。
- 損失が出た年に確定申告をする。申告しなければ繰越は始まりません。
- 翌年以降も連続して申告する。取引がない年でも、繰越を維持するために申告が必要です。
- 第三表と付表を使う。分離課税の申告書と、繰越損失用の付表に記入します。
- 3年以内に使い切る。期限を過ぎた分は失効します。
2番目を忘れて繰越が途切れる例が多くあります。「今年は取引していないから申告不要」と判断すると、前年までの繰越が使えなくなります。
よくある質問
海外FXの損失を申告する意味はありますか
他に雑所得があるなら意味があります。暗号資産やアフィリエイトの利益と相殺できるためです。海外FX単独で損失のみなら、税額は変わりません。
含み損を年内に確定させるべきですか
その年に相殺できる利益があるなら検討の余地があります。ただし税額のためだけに相場判断を曲げるのは本末転倒です。判断は取引としての合理性を先に置いてください。
海外FXと国内FXを両方使えば繰越できますか
繰越できるのは国内FX側の損失だけです。枠が違うため、海外FXの損失を国内FXの枠に移すことはできません。
法人化すれば繰り越せますか
法人の欠損金として繰り越せる制度があります。ただし設立費用、法人住民税の均等割、社会保険料、記帳の手間を含めた比較が必要で、利益の規模によっては不利になります。
過去の年の損失を今から繰り越せますか
海外FXについては制度がないためできません。国内FXの場合、損失の年に申告していなければ繰越は開始していませんが、期限後申告が可能な期間内であれば手続きできる場合があります。税務署に確認してください。
出金していない損失も計算に入りますか
入ります。基準は決済して確定したかどうかで、出金の有無は関係ありません。未決済のまま年を越したポジションの含み損は、原則として計算に含めません。
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この記事で特に重要な3点
- 海外FXの損失は繰り越せない。国内FXの3年繰越は租税特別措置法の特例で、対象が限られる。
- 3年で利益50万円でも、海外FXでは250万円が課税対象になり得る。繰越の有無は税率差より大きい。
- 対策は利益と損失を同じ年に収めることだけ。利益が出た年に納税資金を確保しておく。

