結論からいうと、必要経費にできるのは「その取引で利益を得るために直接必要だった支出」に限られます。取引手数料、VPS代、書籍・セミナー代、通信費や機器代の按分などが該当します。判断の基準は金額ではなく取引との関連を説明できるかです。10万円以上の機器は原則としてその年に全額を計上できず、減価償却になります。
| 項目 | 結論 |
|---|---|
| 経費の判断基準 | 取引との関連を客観的に説明できるか |
| 全額を経費にできるもの | 取引手数料、VPS代、書籍・セミナー代、振込手数料など |
| 按分が必要なもの | 通信費、電気代、家賃、PC・モニターなど私用と兼ねるもの |
| 10万円未満の機器 | その年に全額を必要経費にできる |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等に必要経費にできる |
| 20万円以上 | 法定耐用年数に応じて減価償却する |
| 30万円未満の特例 | 青色申告者向けの制度。雑所得では使えない |
| 最終確認日 | 2026年9月7日 |
経費として認められやすいもの
| 費目 | 具体例 | 計上の考え方 |
|---|---|---|
| 取引に直接かかる費用 | 取引手数料、出金手数料、送金手数料 | 全額。履歴で証明できる |
| ツール・環境 | VPS利用料、EA・インジケーターの購入費 | 全額。取引専用であること |
| 情報収集 | FX関連書籍、有料の情報サービス、セミナー参加費 | 全額。内容が取引に関するもの |
| 通信費 | インターネット回線、スマートフォンの通信料 | 取引に使う割合で按分 |
| 機器 | PC、モニター、キーボード | 私用と兼ねるなら按分。金額により減価償却 |
| 場所の費用 | 家賃、電気代 | 取引に使う面積・時間で按分 |
| 専門家報酬 | 税理士への申告依頼費用 | FXの申告に対応する部分 |
| 移動費 | セミナー会場までの交通費 | 目的が明確なもの |
スプレッドは経費として別に計上するものではありません。損益の中にすでに織り込まれているためです。二重に差し引かないよう注意してください。

按分の考え方
私生活と兼用しているものは、取引に使った割合だけを経費にします。割合には決まった数値がないため、自分で合理的な基準を決め、その根拠を説明できるようにしておくことが求められます。
| 費目 | 按分の基準例 | 計算例 |
|---|---|---|
| 通信費 | 取引に使う時間の割合 | 月6,000円 × 30% = 1,800円 |
| 電気代 | 取引に使う時間・機器の割合 | 月10,000円 × 20% = 2,000円 |
| 家賃 | 取引に使う部屋の面積割合 | 月80,000円 × 10%(8畳中の一角)= 8,000円 |
| PC | 取引に使う時間の割合 | 15万円 × 50% = 7.5万円を3年で分割 |
按分率を高く設定するほど税額は下がりますが、説明できない割合は認められません。「1日のうち何時間取引しているか」「その部屋のどの範囲を使っているか」を記録しておくと、根拠として示せます。
10万円が最初の分かれ目
機器類は取得価額によって扱いが変わります。国税庁の定めは次のとおりです。
| 取得価額 | 扱い | 例 |
|---|---|---|
| 10万円未満、または使用可能期間1年未満 | その年に全額を必要経費 | 8万円のモニター → 8万円を当年に計上 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等に計上できる | 18万円のPC → 毎年6万円ずつ3年間 |
| 20万円以上 | 法定耐用年数に応じて減価償却 | 25万円のPC → 耐用年数に応じて配分 |
注意したいのが30万円未満の特例です。取得価額30万円未満の資産を一括で経費にできる制度がありますが、これは一定の要件を満たす青色申告者が対象です。雑所得として申告する個人は青色申告の対象外なので、この特例は使えません。「30万円まで一括で落とせる」という説明を見かけても、そのまま当てはめないでください。
また、私用と兼ねる場合は按分後の金額ではなく取得価額そのもので判定します。20万円のPCを50%按分するとしても、判定は20万円で行います。
認められにくいもの
- 取引資金そのもの。入金は資金の移動であり、経費ではありません。
- 取引による損失。損益計算に含まれるため、経費として重ねて計上できません。
- 関連の薄い書籍・セミナー。一般的な自己啓発や資格取得は認められにくくなります。
- 私的な飲食費。情報交換を名目にしても、相手と目的を示せなければ困難です。
- スーツ・時計など。取引に必要と説明することが難しい支出です。
迷ったときの基準は「これがなければ取引ができなかったと説明できるか」です。説明が苦しいものは、無理に計上しないほうが安全です。

証憑の保存
- 領収書・請求書・クレジットカード明細を、年ごとにまとめて保存する。
- オンラインで購入したものは、購入完了メールやダウンロード明細をPDFで残す。
- 按分率とその根拠をメモに残す(取引時間、使用面積など)。
- 前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類の保存が必要になる。
経費は証憑があってはじめて主張できます。金額が小さくても、レシートを捨てないでください。
よくある質問
経費で赤字にしても大丈夫ですか
雑所得がマイナスになっても他の所得と通算できず、繰越もできません。実質的に切り捨てになるため、経費の計上は利益がある年に対応させるのが合理的です。
按分率は何割までなら認められますか
一律の上限はありません。実態に即しているかが基準です。専業で1日中取引しているなら高い割合も説明できますが、兼業で数時間なら相応の割合になります。
EAの購入費は一括で経費にできますか
10万円未満なら購入した年に全額計上できます。10万円以上のソフトウェアは、原則として耐用年数に応じた償却の対象になります。
海外業者への送金にかかった手数料は経費ですか
取引を行うために直接必要な費用として計上できると考えられます。明細を保存しておいてください。
家族に手伝ってもらった分を払えますか
生計を一にする親族への支払いは、原則として必要経費になりません。事業所得における専従者給与のような制度は、雑所得にはありません。
領収書をなくした場合は
クレジットカードの明細、銀行の振込記録、購入時のメールなどが代替の証拠になります。何も残っていない支出は計上を見送るのが安全です。
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この記事で特に重要な3点
- 基準は取引との関連を説明できるか。スプレッドは損益に織り込まれており、経費として重ねない。
- 機器は10万円未満なら全額、10万円以上20万円未満は3年均等、20万円以上は減価償却。
- 30万円未満の一括計上は青色申告者向けの特例で、雑所得では使えない。

